
グルテンフリーと健康問題
みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.33
2025年4月 業務執行理事 南埜 幸信
昨年千葉県にて日本初の米粉専用品種の有機栽培にチャレンジを始めた。今年はいよいよ2haの本格実施ということで、この水田から出荷が予想される米粉の嫁ぎ先を農水省からの紹介もいただきながら、小規模とはいえオーダーエントリーシステムを動かし始めたところ、米粉=グルテンフリー商品について関心の高さと反響の大きさに驚いている。
20年ほど前、アメリカのオーガニックの視察にホールフーズ等のオーガニックスーパーの店頭を回ったときに、すでに多くの店でグルテンフリーコーナーが常設されていた。オーガニックのコーナーと同じくらい売りの面積を持っているくらいであった。これが当時まさか日本に来るとは思わなかったが、今回いくつかの米粉関係の専門店やネット系の加工メーカーと打ち合わせさせていただき、その反響は予想以上に大きいことが分かった。コメが主食の国でも、もはやグルテンフリー商品が無くてはならないものになってきている。
先日佐賀県のみやき上峯オーガニックビレッジの一周年記念セミナーで、国内のオーガニックの現状について講演を依頼されお伺いしてきたが、同日のもう一方の講演者が、北九州市でクリニックを開院されている内山葉子先生で、このグルテンフリーと健康の問題に現場で取り組んでらっしゃる第一人者である。多くの著書も出版されているが、まず、第一に取り上げた問題が、グルテンと健康の問題であったという。グルテンを止めることで解決できるアレルギーや体調不良などの症例が多くあるという現場からの報告である。また、先生は食事と健康の関係からも、オーガニックの食事を奨励されている。
この有機農業運動が日本で芽生えたころ、熊本県の菊池市の菊池養生園の竹熊宣孝先生とか、奈良県五條市の慈光会の柳瀬義亮先生とか、心あるお医者さんたちが医と食と農の連携の大切さからオーガニックを志向すべきという提言が大きな運動推進のエネルギーになったことが記憶によみがえってきた。改めて統合的な医療の関係者との接点を図るべきだと内山先生のお話をお伺いしながら感じ入っていた。
さて、グルテンフリーの基礎知識。注目されている理由や、体への影響は?ということで少しまとめたい。米粉使用、小麦不使用等専門店やカフェなどで、日常的に目にする機会が増えてきた「グルテンフリー」というキーワード。最近では、インフルエンサーや芸能人やモデルの中でも実践している人は少なくないようだ。
グルテンフリーとは、グルテンを含む食品を摂取しないようにするライフスタイルのこと。私たちが普段よく口にするパンやパスタなどは、小麦粉が主原料である。この小麦粉には「グルテニン」と「グリアジン」というたんぱく質が含まれているが、小麦粉に水を加えてこねることで、この2つが絡み合い「グルテン」になる。グルテンには食品をふっくらさせたり弾力を持たせる性質があり、パンやケーキなどのお菓子のやわらかさはグルテンによって生み出されている。
なぜグルテンフリーが注目されているのか?グルテンフリーは、その生活への影響から食意識の高い人々から支持されている。そもそもグルテンフリーは、セリアック病患者の食事療法として開発された。セリアック病とは、グルテンを摂取することで腸の細胞が破壊されてしまい、腹痛や倦怠感など様々な不調が出てしまう病気だ。日本ではセリアック病患者は多くないが、小麦アレルギーを患っている人は必然的にグルテンフリーを実践していた。そして、近年ではセリアック病や小麦アレルギー患者ほどではなくても、グルテンを摂取することでちょっとした倦怠感や頭痛を引き起こしてしまうグルテン不耐性の人が多くおり、気づかずに生活していることがわかってきた。実際には慢性的な不調の原因がグルテンで、グルテンフリーを実践することで体質が改善したり、肌がきれいになった人たちがたくさん出てきたので、グルテンフリーは食や健康意識の高い人に支持されることになってきている。
グルテンフリーの一番のメリットは、体質や肌質の改善が期待できることだ。グルテンが体質に合わないことに気づかずに生活している人は少なくなく、グルテンフリーを実践するだけで体調が良くなったり、肌荒れが少なくなったと感じる人がたくさんいるとのこと。また依存性の高い小麦を摂取しないことにより、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できるとも言われている。パンやピザ、ケーキなどのおいしさの源は、グルテンだ。グルテンの含まれない米粉パンや米粉のヌードルは、小麦のものと比べるとどうしても味が落ちるといわれてきたが、アミロース含量の高い米粉専用品種の開発や、最近は加工技術が発展してきたこともあり、年々おいしいグルテンフリー食品が増えてきていると実感している。
米粉専用品種の有機栽培の取り組みを起点に、オーガニック+グルテンフリーそしてビーガンの三拍子そろった商品を、美味しく開発して、皆様にお届けしていきたいと本気で考え出している。
次号に続く