
九州産の有機冷凍ほうれん草と有機にんじんの原料の生育状況と加工見通し 2025年2月10日現在
みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.26
2025年2月 業務執行理事 南埜 幸信
今年も九州有機冷凍野菜の原料収穫時期がやってきた。というよりも、昨年は、初めての原料栽培ということで、準備不足や、管理の不慣れということもあり、後半の肥料切れの症状から葉の黄変が始まり、十分な生育を待てずに、収穫を急がざるを得なくなり目標収量まで届かない畑が出てしまったが、今年は皆さん同じ失敗は絶対にしないという勉強熱心な生産者のおかげで、ほぼ予定どおりの収穫が期待できそうな状況だ。
来週から再来週にかけて、収穫が始まる予定となっている。収穫が順調にいけば、昨年の約3倍程度の収量を見込める様子に、安堵している。
下記の写真は、熊本県の菊陽町の有機生産者、オーガニックプロデュースの元永さん親子。昨年は予想の半分程度しか獲れなかったが、今年はまずまずの出来栄えに思わず写真の前で笑みがこぼれる。

加工原料は単純にkg単価設定なので、収穫量に応じて売り上げも増える。青果と違ってまさしく豊作貧乏などなく、豊作ホクホクなのだ。まずこの冷凍ほうれん草。加工原料として原料コストを下げ、買いやすい価格を実現するために、機械収穫を前提に作業・作付け体系を作っている。手収穫だと複数人で約一週間かかるような収穫作業を、オペレーター一人が数時間で収穫できる。しかも機械とオペレーターは冷凍工場の収穫チームが来て作業をしてくれるので、生産者は栽培管理に集中して取り組める。また、これは、働き手の減少に頭を悩ませる生産者の救世主的な作物にもなる。取り組んでいる4人の生産者は口をそろえて、これだったら面積を増やせるという高評価だ。
また、写真でわかるように、何も防寒の手当てもせず、ほうれん草が寒さを受けて一番の甘みと美味しさを出す冬の時期の栽培に集中することができる。ほうれん草は元々冬の野菜で、寒さを受けると、寒さから自分の身を守るため、本当に糖度があがり美味しくなる。旬の最高の美味しさを、冷凍という添加物の無い加工で、美味しさを保持し、お客様に年間通してお届けすることができる。これも大きなメリットだ。
この機械収穫は、上記のような長所ばかりではない。ほうれん草の株元の雑草が大きくなってしまうと、その雑草も同時に収穫してしまうことになり、それがほうれん草に絡んで、加工品ではクレームになる雑草という異物混入に繋がる。そこでこの冷凍ほうれん草原料の栽培では、冬にんじんの抑草技術で習得してきた、夏場の太陽熱消毒を利用している。播種までの夏の約2ケ月程度を太陽熱で温め、雑草の種を焼き、雑草を抑制している。昨年は作付けの決定が遅れたため、この太陽熱消毒が十分にに期間がとれず、最後まで雑草に悩まされたが、今年は準備万端。しっかりと対策ができた。
今回収穫直前の畑にお伺いして、畑で試食タイム。本当においしい味に仕上がっている。これが加工を経て皆様のお手元に届くのは、おそらく今年の4月以降。ぜひ旬ならではの有機冷凍ほうれん草の味をお楽しみください。その美味しさに驚かれると思う。
また、今年は試作で有機にんじんとブロッコリーの冷凍もトライアル程度であるが、加工を予定している。これもぜひ旬の味を冷凍で。
次号に続く