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米粉専用品種の有機栽培米粉を使った商品開発と試食会の報告

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.27

2025年2月 業務執行理事 南埜 幸信

先日、埼玉県のみたけ食品工業の会議室をお借りして、昨年千葉県の匝瑳市の佐藤農場で取り組んでいただいた米粉専用品種の有機栽培米を使った米粉の試作商品開発発表会および試食会を開催した。

グルテンフリーの原料として注目される米粉についての試食ということもあり、15社の試作メーカーが参加いただき、当日は50名を超える参加者が集い、生産者の佐藤さんのお話しから、メーカーさんの個別プレゼン、そして試食と、米粉尽くしの談議に花を咲かせた。農水省からは、いま超多忙な穀物課の米粉担当の課長補佐や、いつも応援いただいている、農業環境対策課の課長補佐やインターンの方等、多くの方のご参加をいただいた。予想以上の反響に驚いているところである。

以前にもご紹介したが、なぜ日本にコメの麺やコメのパンが無いのかということでいうと、現在ごはんとして日本人が食べている品種では、パンは膨らまず、麺は固いということで、小麦の代替えにはとてもなりえない。ここは、本当に小麦粉の代替えとして、米粉が使用できるように、農水省とその外郭団体である農研機構が、様々な米粉専用品種を世に出してきている。大まかにいうと、米の品種については、アジア圏で主流な『インディカ米』(長粒種)と、日本名人が主食として育ててきた『ジャポニカ米』(短粒種)がある。この米粉専用品種は、品種改良によって、日本の品種をベースにして、インディカ米の品種を交配させてつくった。パン・麺用の米である。表現としてはパサパサ感の強い米である。

この米粉専用品種をおそらく初めて日本で有機栽培したのが今回の佐藤さんの取り組み。性格が分からない中で、生育するイネの顔を見ながらの、手探りの栽培であったと佐藤さんは振り返る。コメの有機栽培の場合、一番大きな課題が除草。田植えより時間と労力を要することから、米栽培の最大の山場が除草である。この問題を解決するために、近年画期的な除草機が発売された。それがオーレック社のWEEDMANという機械。条間は勿論、株間も同時に除草できる。除草に入るタイミングさえ間違えなければ、除草は1回入ればほぼ雑草を押さえられるという優れものである。この機械は有機米作りについて、革命を起こす役割を果たすのではと期待をしている。確実に歴史は変わると。

また、この米粉専用品種は、栽培してみて強みとして分かったのは、風に強いこと。実は日本を代表する米の品種であるコシヒカリは腰が弱く、強い風が吹くと倒れやすいという弱点がある。特に夏場に台風が幾つも通る日本では、イネの倒伏による登熟不全であったり、倒れてしまって水に漬かってしまうことから、穂発芽という被害を被ることが多いのだが、アジア系の遺伝子をもっているからなのか、倒れにくい粘り腰を持っていることが解った。たまたま昨年お盆に房総半島の脇を大きな台風がかすめたので、心配で翌朝水田に駆け付けたが、見事に立派に真っすぐ立っている姿に感動を覚えたことは記憶に新しい。


※左図台風翌日米粉専用品種 右図同日の飯米品種 ほぼ倒れて寝てしまった。

そしていよいよ製粉になって、かねてコラムでお伝えしたように、穀物を丸ごといただくということで、特に私たちは、米粉こそ玄米を軸に商品開発をと考えていた。しかし、製粉終了後の担当者の方々の意見としては、玄米の癖や独特の風味がはっきり残っていて、これが果たして、原料としてどうなのかという疑問が多く出された。特徴のない精米の米粉の白い粉に慣れている方々にとって、果たしてこの玄米粉はどのような感想を持たれるだろうかと、当日まで本当に不安であった。

試食会は各メーカーからプレゼンをいただき、そして試食と、全体で20品目を超える試作品が集まり、そして同じ商品について、玄米粉と白米粉を比較製造するということで比べながらの試食ができた。結果、商品によって評価の違いが出たものの、玄米粉の評判が意外に良くて今後の開発に自信を得られたことが大きい。玄米の成分が入っていることで、香ばしい味になったり甘みが出たり、かえって味に深みが出たりと好評な声を聞くことができた。

この評価を基に、今年の作付けから本格的に米粉専用品種を用いた有機米粉の商品開発に具体的に進めていきたいと考えている。ぜひ今後は皆様方からのご意見をお伺いしながら商品開発をと考えている。生産者からも増反可能と意思表示いただいている。日本の伝統的な穀物である米。この更なる活用の可能性を皆様と追い求めていきたい。

次号に続く

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