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有機農業のあるべき姿とは~持続型社会はオーガニックからvol.2

みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.11

2024年10月 業務執行理事 南埜 幸信

(2)肥料の自給率の検証

ここで日本の肥料の自給率について検証したい。現在食料自給率はカロリーベースで37~38%と言われているが、残念ながら現状の農業生産の前提となってしまっている肥料の自給率をさらに検証したい。そこには実質自給率のさらなる低迷状況が見えてくる。 日本農業はもはや持続性や永続性を喪失しつつある現実に驚愕するのである。

まずは化学肥料。

農水省 第23号特別分析トピック:我が国と世界の肥料をめぐる動向(更新)より

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_rep/monthly/attach/pdf/r5index-3.pdf

6ページにも記載されているように、我が国は尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)のほぼ100%を輸入に頼っている。地力として土地に定着していくのではなく、毎年生産資材として投入し続けるであろう肥料のほぼ全量を輸入に頼っていることがわかる。実質自給率の低さに驚かされる。さらに見るとりん安の中国への依存度がかなり高い。これは、政治的な部分で中国との関係が悪化してしまうと、突然入手できなくなるリスクも高い相手国といえる。近年の原発の処理水の放出についての反応で、突然日本の水産物を禁輸したことをみてもないとは言えないのだ。肥料の海外依存度を上げてしまうことは、実質食料自給率の更なる低下ということである。

しかもリン酸は地下資源。石油や天然ガスと同じく、無限資源ではなく、有限資源であり、まさかの時は自国優先されるのは間違いないところであろう。このような脆弱な生産基盤に、いま日本農業全体が置かれている。日本の安全保障そのものの問題でもある。万が一国際紛争が始まれば、食料は武器になってしまうことは、歴史が証明している。

次に有機肥料。

これも見事なまでに輸入依存の状態だ。有機の生産者が使っているぼかし肥料。この主な原料は、大豆かす、菜種かす、米ぬか等だが、これも原料の大豆と菜種は圧倒的に輸入由来のものだ。また、家畜の排せつ物の堆肥についてもよくよく考えてみると、その餌が輸入に頼るところは非常に大きい。家畜の餌は大別すると、牧草や稲わらなどの粗飼料と、トウモロコシや大豆油かすなどの濃厚飼料がある。近年の飼料自給率のデータをみると、粗飼料の自給率は80%近いが(牧草も20%輸入という現実も問題)、濃厚飼料の自給率は約12%。この粗飼料と濃厚飼料の使用割合は畜種によっても異なるが、酪農で約半々。肉用牛だと繁殖期を除くと粗飼料10%濃厚飼料90%の割合。養鶏・養豚に至ってはケージ飼育やストレージ飼育に集約されているように、工業的飼育の進行により、ほぼ100%濃厚飼料という実態であるので、資料全体としての自給率は約25%と言われている。これらのデータを総合的に判断すると、穀物の輸入が止まってしまうと、家畜糞尿の堆肥も現在の10~20%まで減少すると言われている。また、有機農業でリン酸肥料としてよく使用されている天然系のグアノリン酸(海鳥やコウモリの糞の堆積物)も輸入の地下資源であり、当然有限の輸入肥料である。つまり、有機肥料の全体の自給率も10%程度といっても過言ではないのかもしれない。

日本は江戸時代の約300年間の鎖国のなかでも、海外からの肥料成分の輸入を一切行わないなかで、約3倍の人口増への食料供給を成し遂げてきた伝統的・持続的オーガニック農業技術体系を持つ国である。里海・里海からの持続的な資源を基本に、近年の耕耘技術と、多様なアレロパシーを持ち、窒素肥料を空間の無尽蔵な窒素から土中に固定する能力の高い各種緑肥の活用で、近代的な持続型オーガニックの展開が可能になると確信している。

次号に続く

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