海洋のブルーカーボンと有機農業の連携
みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.18
2024年12月 業務執行理事 南埜 幸信
先日、岩手県の今泉さん(元岩手県農林部長)から提案があり、今後に向けて、日本一の雑穀栽培県である岩手で有機の雑穀栽培の実現に向けた取り組みのスタートとして、有機雑穀作付け会議に行ってきた。今回は岩手県からも後援をいただくという名誉も頂いたことはお伝えしておきたいが、そのついでと言っては申し訳ないが、かねてより、ゆず(北限の柚子)と地元水稲品種の「高田の夢」に取り組む生産者が、有機認証をとって、有機栽培を始めたいという陸前高田の生産者グループと会い、圃場も確認してきた。
テレビでしか見ていなかった、大きな防潮堤の内側で、新しい農業のスタートを切ろうと、地域の生産者が頑張っている姿は、本当に感動的であったとともに、やはりこの地域は、歴史的に里海と里山の生物資源の活用によって、土づくりを進めてきた、典型的な日本型の有機農業モデルになれることを本当に実感してきた。特に有機の柚子は、ヨーロッパからの引き合いが強くなってきているので、この持続的な有機農業の土づくり技術といっしょに、世界へ発信していこうと、地元の生産者たちと大いに盛り上がった。
そんな取り組みをしていて、東京に帰ってきたら、日経新聞に注目の記事。大手IT企業の富士通が、スピンアウトで、ブルーカーボンに取り組む総合的な会社を立ち上げ、クレジットの運用から、資源の維持開発、そしてこのブルーカーボンの地域活用といったトータルの事業をすすめていくという内容である。
実はここまで皆さんにはお伝えできなかったのだが、この第一号の藻場の再生・創造のにかかわっているのが、私と旧知の仲である元海藻科学研究所の所長の泉田先生で、実は泉田先生から、今後この海藻資源を生かした液肥・堆肥を製造していくので、その共同実証実験を進めていく生産者パートナーを繋げて欲しいと言われているのだ。里山と里海の持続的な地域資源で、永続的な有機農業の土づくりを進めていく。これが私の人生最大のテーマとしてきたが、凄いスピードで動き始めてきた。
次号に続く