今年の一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムの取り組みを振り返って
みどりの食料システム戦略の実践レポート vol.20
2024年12月28日 業務執行理事 南埜 幸信
今年の最後の投稿で、改めて今年の一般社団法人日本有機加工食品コンソーシアムの取り組みを振り返って整理して、新たな年を迎えたいと思う。組織設立後2年目という大事な年。今年は初めて農林水産省から「有機加工食品の原料国産化のための取り組み」として、補助金をいただき事業運営をしていくという社会的責任を負って動き出す一年であった。その取り組みを中心に、ここで皆様に整理してお伝えしたいと思う。
まずは事業の大きな柱、有機穀物の「オーダーエントリーシステムの運用」。有機穀物の生産については農水省からの補助金の支給が、生産者と実需者の播種前契約の締結が条件となる。つまり栽培する前に販売先が決まっていないと補助金がでませんという制度だ。真の契約栽培と言っていい内容である。この播種前契約を着地点に、有機栽培で穀物を作りたいという生産者とそれを使って有機加工食品を作りたいというメーカーを、マッチングさせて契約成立まで導く事業。これがオーダーエントリーシステムである。
日本では、灘の酒造組合と兵庫県の仲町や吉川の酒米生産者が「村米制度」という契約関係が江戸時代に生まれ、その関係がかの有名な酒米「山田錦」を生み出したと言われている。これを現代の有機穀物で復活させたいというのがこの事業の趣旨だ。最終目的である加工商品とそれに適性のある品種の栽培。この関係から、味と品質に優れ、経済的な合理性のある有機加工食品が生まれると期待している。
しかしこのオーダーエントリーシステムについては、正直遅々として進んでいないところがある。現在現状を整理し、課題を明確化し、今後に向けての事業活動を、改めて農林水産省の指導もいただき展開していこうと、北海道の営農企画の今城さんに協力もいただき、進めている最中である。来年は良い報告ができると期待している。
新規の商品開発については、まずは有機即席ラーメンの開発。創健社の子会社の埼玉県の高橋製麺さんに、コンソーシアムの保有する国産の有機小麦を原料として供給し、スープも会員のヤマキ醸造さんから有機のしょうゆと味噌をベースとした有機スープの供給もいただき、全部が有機という商品が完成した。現在創健社のブランドで販売が展開されている。
次の事業としては、有機ふすまの有機餌化である。従来国産の有機小麦の製粉の過程ででてくるふすまについては、区分管理と格付けの問題から、一般のふすまに混ざってしまい、有機としての活用ができなかった。これを区分管理して格付けする準備が整い、今年の6月から、有機畜産の有機餌として供給することが可能になった。
次の事業は国産有機冷凍野菜の開発。これは昨年熊本県産の有機冷凍ほうれん草の加工からスタートし、今年はほうれん草は約2倍の面積になり、皆様には周年供給が可能になったほか、新たに、カボチャ、にんじん、ブロッコリーの加工も開始している。冷凍加工工場も、熊本大同フーズに加え、北海道旭川市のエア・ウォーターアグリ社でも認証を取得いただき、稼働が開始している。猛暑のなかでの野菜材料の安定供給と、下処理が省けることで、学校給食への食材の提案など、冷凍野菜の持つメリットを生かしていきたいと考えている。
次に米粉専用品種の有機栽培への取り組み。従来の飯米用品種は、アミロースの含有量が低いので、どうしても米粉をパンにしても、膨らまないとか、固いとか、米粉が真の小麦粉の代替えにならなかったところで、農水省はパンや麺などの小麦粉の代替えになれる品種として、新しい品種の開発を進めている。これを導入して有機栽培で取り組もうということである。今年は試作で40アール取り組み、製粉は玄米米粉と白米米粉の二通りで準備している。年明け米粉の加工メーカーに集まってもらい、試食検討会を開催する予定である。玄米には多くのミネラル等の栄養成分と、GABAをはじめ、多くの機能性分が含まれている。米粉こそ、小麦粉の代替えというだけでなく、主食のコメを丸ごといただくという効果を訴求していきたい。
次に「豆乳クリーム」の開発である。ケーキやスィーツに使われる生クリームは、原料の牛乳の国産オーガニック化は至難の業であるが、豆乳を主原料とした豆乳クリームは、主原料の国産化と有機化が視野に入ってくる。基本的なレシピとしては、有機豆乳に有機ココナッツオイル、そしてもう少し粘度の低い植物オイルを混ぜることで、生クリームの食感に近いものを開発することができた。来年は製品化をすすめ、オーガニックでビーガンのクリームで、有機のショートケーキ、ロールケーキ、フルーツサンドなどの開発をメーカーに働きかけていきたい。
次は有機冷凍うどんの開発。国産の有機小麦のなかで、グルテンの含有が中程度の中力粉について、今年は冷凍うどんの試験製造を開始できた。工場の有機認証はこれからなので、まだ国産有機小麦粉使用という商品だが、冷凍食品売り上げベストスリーに入る冷凍うどんが有機商品になる道筋がついたことは大いなる一歩と考えている。
次に新たな商品として有機サツマイモ使用のポタージュの販売準備が整ったことである。これはワタミファームの直営農場の有機さつまいもを原料として、糖分を加えず、さつまいもが特性として持っている澱粉が糖化する温度でスチーム加工した優れもの。その甘さはさつまいも自体が持っている潜在能力を引き出したものだ。ぜひご賞味ください。
次に有機のゴマ栽培の拡大のための取り組み。ゴマについてはセサミン等の健康機能成分が注目され、需要は拡大の一途であるが、国産の自給率は0.1%という惨憺たる状況。この原因としては、収穫から脱穀、調整といった作業について、機械体系が整っておらず、人手がかかりすぎて面積をこなせないということがある。一方ではアフリカ原産で高温乾燥に強く、特にシカが食べないという獣害に悩む地域には救世主のような穀物でありこれはぜひ中山間地の有機農業の柱として取り組みを書進めていきたいと考えている。年明けに全国の有機生産者向けに、有機のゴマ栽培の導入ウェブセミナーも開催していく予定である。特に今年は千葉県で、機械一貫体系によるごまの有機栽培に取り組み、有機農業で約30ヘクタールという栽培規模を、ひとつの農業生産法人で達成できた。このモデルを水平展開していきたい。
以上、商品開発について、今年の取り組みを整理してみた。来年はそれぞれを更に具体化し、さらに拡大し、一般市場への浸透も進め、有機加工食品の原料国産化をさらに強力に進めてまいります。皆様のご支援ご協力よろしくお願いいたします。
以上